文化人類学

ムブティ・ピグミーとは?イトゥリの森に住む狩猟採集民について!

アフリカのイトゥリの森に住むムブティ・ピグミーのことを知っていますか?

今回は、人類が誕生した地の近くで生活する狩猟採集民のムブティ・ピグミーについて紹介したいと思います。

目次
  • ムブティ・ピグミーとは?
  • ピグミーとは?
  • アフリカのピグミー
  • ムブティ・ピグミー
  • 狩猟と採集
  • 狩猟
  • 採集
  • 社会生活の特徴
  • 平等主義

ムブティ・ピグミーとは?

ピグミーとは?

ピグミーとは、成人男性の平均身長が150cmに満たない低身長の集団のことを呼ぶ俗称です。

ギリシャ語でひじから手までの長さを表す単位に由来しますが、今では小柄な森の民の総称として使われています。

ピグミーはアフリカだけでなく、東南アジアやインド洋のアンダマン島など、世界各地に分布しています。

アフリカのピグミー

アフリカのピグミー系住民は、コンゴ、カメルーン、ガボンなど主としてコンゴ盆地に広がる熱帯雨林地域に住んでいます。

林縁部や山地林にもいますが、森林から離れたサバンナや疎開林には分布しません。

低身長など森林適応的な身体形質や森林に強く依存した生活などを考えると彼らは典型的な森の民と言えます。

人口は全部で60万人程度と推定され、そのうちコンゴ民主共和国のイトゥリの森に住むムブティ・ピグミーは3~4万人ほどです。

西欧社会でピグミーと総称される人々は現地では地域により異なった名で呼ばれています。

  • カメルーン東部:バカ
  • ガボン:ボンゴ
  • 中央アフリカとコンゴ共和国北部:アカ
  • コンゴ民主共和国北東部:ムブティとエフェ
  • ウガンダ西部:スアまたはトゥワ

これらの集団は使用する言語も異なりますし、彼らの言葉は独自の言語というよりも周辺の農耕民からの借用語である場合が多いです。

ピグミーの生活や文化の独自性を理解するうえで言語はそれほど重要ではありません。

ピグミーは言語以外の文化要素に見られる類似の方がむしろ重要だと考えられるからです。

コンゴ盆地の東西に2000km近い距離を隔てているにもかかわらず、ピグミーたちは、以下のような共通性を持っています。

  • 狩猟と採集に重きをおいた生業
  • 森の精霊が主役を果たす儀礼
  • それらの儀礼において演じられる踊りと歌
  • 周辺農耕民との密接な関係を保っていること

とくに世界的に有名になったポリフォニー(多声合唱)は彼らの音楽文化の際立った特徴であり、彼ら自身のアイデンティティにも関わっています。

ムブティ・ピグミー

たくさんいるピグミーの中でもこの記事では、ムブティ・ピグミーについて紹介します。

ムブティを紹介する理由は狩猟採集民について最近勉強しているのでピグミーについて知りたいと思った時にムブティについての本が図書館に多くあったからです。

図書館に本がたくさんあるのは、ムブティについての研究が盛んに行われているということだと思います。(文化人類学とかをちゃんと勉強したわけではないので分かりませんが・・・)

ムブティの研究が盛んなことにはもちろん理由があって、それは狩猟採集民であり、イトゥリの森という環境にもあると思います。

人類誕生の地とムブティの関係

イトゥリの森はアフリカの熱帯雨林の端に位置し、熱帯雨林と疎開林や草原(サバンナ)との境界の近くに位置します。

このような環境は人類の誕生の地である考えられているからです。

人類の進化は、まず霊長類として熱帯雨林での樹上生活で直立する体幹を形成するなど二足歩行に適した体形を作ります。二足歩行のサルの一部が、気候変化で森だった場所が草原になり、草原での地上生活を始めます。人類はこの草原での地上生活を送ったサルから進化し、二足歩行や高度な知覚・運動能力を必要とする狩猟行動を発達させたと考えられています。

イトゥリの森はこのような環境であり、そこで人類が誕生してから農耕が始まった約1万年前まで数百万年、人類が行っていた狩猟採集生活をするムブティを研究することは人類進化の謎への手掛かりがあるかもしれません。

そのため、ムブティの研究は盛んに行われるのです。

ムブティの狩猟と採集

狩猟

ムブティは狩猟採集民であり、主要な狩猟法は、ネット・ハンティング、弓矢猟、槍猟です。

ネットハンティング

ネット・ハンティングとは、10~20名の男女が参加する集団猟です。

狩猟に使うネットは、森に生える蔓性植物の内皮をねじって作り、家族ごとに所有します。

一枚のサイズは高さ1m、長さ30~50mで、狩猟の際にはこれを10枚ほどつなぎ合わせて、大きな円を作りその中に獲物を追い込みます。

男性がネットを張り、ネットにかかった獲物を処理します。女性と子供は獲物を追う役を務め、また獲物をキャンプまで運搬します。

主な獲物は中型の哺乳類で、とくに森林性のダイカ―類が多く、捕獲量全体の9割近くを占めています。

一般的に狩猟の成果は不安定と言われていますが、ネット・ハンティングの捕獲量は比較的安定しており、そのため最近では獲物が商業的交易の対象にもなりました。

弓矢猟・槍猟

弓矢猟は古くからのムブティの狩猟法で、毒矢を使用することもあります。

槍猟では、幅5~8cm、長さ30~40cmの大きな穂先がついたもので、バッファローやゾウなどの大型哺乳類を獲るのに使われます。

とくに、ゾウ狩りはゾウの近くまで接近して腹部に槍を打ち込むという高い技術と勇敢さを必要とする為、少数の名人のみが行える狩猟法です。

採集

狩猟は自給用及び交易用の獣肉を供給するものとして重要な活動ですが、ムブティが摂取する食物の半分はキャッサバやバナナなどの農作物によって賄われています。

ムブティは、これらの農作物を近くに住む農耕民との間で獣肉や労働と交換することによって得ることができます。

また、農民が住む村や畑から勝手に漁ってくることもよくあります。食物の半分は農作物によって賄われていますが、獣肉以外にも森の動植物は大切な食料です。

食用として採集されるものには木の実などの植物や芋虫等の無脊椎動物やそれらの産物があります。

なかでもハチミツはムブティの好物で、ハチミツの季節には、摂取カロリーの80%近くをハチミツから得ています。

食用以外にも、薬用、物質文化の素材、儀礼など、様々な用途で森の動植物を頻繁に利用しています。

また、ムブティは、利用しない動植物にもそれぞれ名前をつけて、その分布や生態、習性などに関して詳しい知識とそれに基づく生活技術があります。

社会生活の特徴

ムブティはこれまで、数十人からなる小さな居住集団を形成し、1~2ヶ月ごとに居住地を変えながら移動生活を営んできました。

最近では、主要な道路沿いに半定住的な集落をつくって小規模な焼き畑農耕を営む集団が増えていますが、一年のうちの数か月かは森の中に移動して狩猟採集生活を送っています。

平等主義

彼らの社会生活における最大の特徴は平等主義とも呼べるような徹底した互恵の原則です。それは、食物の分配に端的に表れています。

たとえば、狩猟でとれた獲物の所有者は、それを仕留めるのに用いた道具(主にネット)の持ち主とされますが、彼はその獲物を多くのものに分配しなければなりません。

実際に獲物を捕獲したハンターやそれを手伝った人、キャンプまで獲物を分配した人、その日の猟を先導した人、キャンプに残って留守番をした人など、その日の役割に応じて肉を分配します。

こうした分配は細かなルールによって定められており、これだけでも獲物が広範囲にいきわたりますが、さらにその後で、とくに貢献のなかった人にも分配が行われます。

そして、このように分配された肉が家族ごとに調理された後で、ふたたびそれが家族観でやり取りされたり、一緒に食べたりします。

このように、獲物がとれてから消費されるまで何回も分配が繰り返されることによって、集団成員の間にくまなく食料がいきわたることになります。

こうした分配の習慣を、自然の恵みに頼る狩猟採集民の生活の知恵と考えられます。

狩猟の成果は不安定で、比較的安定しているネット・ハンティングでさえ、大量の日もあれば、何日も不猟が続くこともあります。

相互に獲物を分配することで、そのような捕獲量の違いをある程度緩和されます。つまり、分配が食物不足というリスクを回避するメカニズムになっているというわけです。

しかし、ムブティの分配を観察していると、さしあたってその必要がない場合にも分配が行われいます。それどころか、とくに不足しているわけでもないのに、お互いに同じ種類の食物をやりとりしている場合があります。

むしろ分配すること自体が目的となっているようですらあります。

また、分配の対象は食物だけでなく、道具や装飾品などあらゆる物資に及んでいます。

すなわち、彼らの社会における広範な分配の習慣は、社会的な規範に基づくものであり、それが同時に「持てる者」と「持たざる者」とのあいだの差異を組織的に解消し、平等を維持するメカニズムとなっているのです。

ムブティでは、独り占めすることは最も品位のないことだとされ、なんでも分け与えることこそ優れた人だと思われます。

そもそも長くて数ヶ月で移動を繰り返すムブティは、必要のない物を所有しても意味がないどころが邪魔ですらあります。

ムブティの社会では、個々人が政治的にも対等であり、集団を統率する首長は存在しません。

それどころか、他人に対して威張ったり、あるいは単に責任のある行動をとるような目立った行動をとるだけで、他の成員にからかわれたり、冷笑されるなど手ひどい反撃を受けます。

裁判の制度もなく、個人間で生じた争いの多くは、超越的な権威を介さずに解消されます。

そして成員間でどうしても折り合いがつかないような争いが生じれば、荷物をまとめて移動し、しばらくの間別のキャンプで暮らすことになります。

移動生活を妨げる道具の類は最小限に抑えた彼らのシンプルな暮らしは、人間関係の問題を解消する最良のメカニズムとなります。