地理学

寒帯気候とは?自然や地形、農業、住民生活について

目次

  • 寒帯気候とは?
  • 寒帯気候の自然
  • 冷帯の森林分布
  • 氷河によってつくられた地形
  • 冷涼地域の農業
  • 高緯度地帯の住民生活
  • 極北の狩猟民、イヌイットの人々

寒帯気候とは?

亜寒帯(冷帯)では、針葉樹の純木、タイガ(針葉樹林帯)が広く分布し、シベリアがその典型例です。亜寒帯(冷帯)湿潤気候は、年中平均して降水があり、冬に積雪が多く、東ヨーロッパや西シベリアに分布します。亜寒帯(冷帯)冬季少雨気候は、夏に比較的高温になりますが、冬にはシベリア高気圧に覆われ、非常に寒冷で降水量が極めて少なくなります。年較差が非常に大きく、東シベリアに分布します。

さらに寒くなるとグリーンランド沿岸のような植生が貧弱なツンドラとなります。極寒になると南極のように、ほとんど植物が生育しない氷雪気候となります。

寒帯気候の自然

ツンドラ(寒地荒原)気候地域は、地下に永久凍土(通年にわたって凍結している土壌)が広がる降水量の少ない地域であり、シベリア北部やグリーンランド沿岸、カナダの北部など北極海沿岸の寒帯地域に見られます。ツンドラは、低温で植物の成長可能期間が短い為樹木が成長できない地域であり、鉱山ツンドラも含み、主たる植物は草本類、蘚苔類、地衣類です。

亜寒帯(冷帯)気候地域は、冬の期間が長く寒いが、四季の変化があり、夏冬の温度差が激しい地域です。主にユーラシア大陸や北アメリカ大陸のおおむね緯度40度以上の高緯度地域・高標高地域に比較的広く分布します。北部はタイガと呼ばれる常緑針葉樹の純木、南部は針葉樹林と広葉樹林の混交林が広がっていて、ポドゾルと呼ばれるやせた土壌が分布します。

冷帯の森林分布

冷帯(亜寒帯)には、一般にタイガと呼ばれる針葉樹林の純林が分布します。それらはモミ属、トウヒ属、マツ属、カラマツ属などの針葉樹林です。

日本でも冷帯の北海道は、トウヒ属のエゾマツとモミ属のトドマツの純林が広がります。トウヒ属とモミ属の木は一見似たような樹形をしていて区別しにくいですが、トウヒ属の葉は先がとがっているのに対し、モミ属の葉は先が二つに割れているので、葉を見れば区別が出来ます。

氷河によってつくられた地形

氷河によってつくられた地形にはエスカーやモレーンなどがあります。

エスカーとは、氷河中や氷河底にトンネルをつくって流れる融氷流水(氷河が融けた流水)が氷成堆積物(流動する氷河中に取り込まれた運搬された岩屑が氷体の衰退に伴って解放され、その場に堆積した堆積物)を運搬し、トンネル内の流路に沿って再堆積させてできた、細長い堤防上の砂礫堆積地形を指します。

モレーンは、氷期(氷河時代)などの寒冷期に氷河が前進しながら砂礫をブルドーザーのように前面に押し出して、その後、氷河が後退した時にその場所に残していった堤防状の地形です。谷をせき止めるように堤防上のモレーンが形成されています。

エスカーは融氷流体によって運ばれた堆積物からなっている地形なので、堆積物が丸みを帯びているのに対し、モレーンの堆積物は氷河によって運ばれたものなので、特に氷河前面に運搬・堆積してできたターミナル・モレーンの堆積物が角ばっている傾向です。

氷河時代などの寒冷期に、氷河の作用でつくられたエスカーやモレーンの砂礫の高まりがその後、温暖になって樹木や草原、住居などで覆われると、現在ではそこがかつてのエスカーやモレーンであるとは分からないことが多くあります。U字谷に水がたまったり、堤防上のモレーンで囲まれた窪地に水がたまると湖が出来ます。これを氷河湖と言います。

冷涼地域の農業

地表には植物の枯れた腐食が堆積し、腐食は有機物であるためそれが土壌の栄養分になっています。したがって腐食が混ざっている土壌の表層が黒っぽいのはその為です。しかし、最終氷期に氷床(大陸氷河)があったような北ヨーロッパや北米は、氷河によって土壌の表層の腐食がはぎとられて栄養分が少ない為、農耕には不向きです。それによって氷河に覆われていた場所は酪農地帯になることが多くあります。

タイガ(針葉樹林帯)地域にはポドゾルと呼ばれる灰白色の土壌も見られます。針葉樹の落葉が地表に堆積しても寒さの為分解が進まず、厚い腐植層をつくります。この腐植が強酸性のフルボン酸を生成し、この酸が鉄やアルミニウムを溶脱させて漂白層ができ、その下に鉄やアルミニウム、腐食が集積した褐色の集積層ができます。この作用をポドゾル化作用と言います。ポドゾルは強酸性を示し、養分が極度に欠乏しているため、肥沃度はきわめて低く、農業には不向きです。

氷河レスの堆積と農作物

氷河が流れてその前面に出来たモレーンには、地表からはぎとられた腐植が多く含まれ、その再粒物質が風で飛んで再堆積したものをレスと呼びます。レスにはたくさん腐植が含まれているため、栄養分が多く濃厚には適しています。そのような盆地は主要な小麦地帯となっています。

冷涼な気候に適す農作物にジャガイモがあります。原産地は南米アンデス山系の標高約3800mにあるチチカカ湖周辺で、7000年以上前から栽培されています。

高緯度地帯の住民生活

極北の狩猟民、イヌイットの人々

イヌイットはこれまで動物を取る為に季節の変化に応じて居住地を変えてきました。冬には海氷上に現れるアザラシの呼吸穴を利用してアザラシを捕り、夏にはホッキョクイワナやアザラシ、シロイルカを捕り、内陸でカリブー(トナカイ)を狩猟します。これらはイヌイットの食料になるだけでなく、脂肪は燃料になり、骨や枝角、牙は道具の材料となりました。

イヌイットは主食のアザラシやカリブーの肉、ホッキョクイワナなどを生や自然冷凍の状態で食べることが多かったが、それらに含まれる血液から不足するビタミンを摂取しています。太陽光線は皮下に取り込まれるとビタミンDが体内で作り出されるため重要です。極北地域は日射量が少ないので北欧などでは、太陽光線を吸収するメラニン色素が少ないコーカソイド(白色人種)が住んでいます。しかし、モンゴロイド(黄色人種)のイヌイットは皮膚にメラニン色素が多く、それが太陽光線を吸収して皮下取り込み量が不足して、ビタミン不足になってしまいます。そのためにも狩猟した動物の生肉や内臓を食べる必要性がありました。