目次
- 富士山の地学的背景
- 富士山の裾野が長い理由
- 富士山のマグマの特徴
- マグマの分類
- 火山が人に与える影響
富士山の地学的背景
フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に、太平洋プレートが沈み込むことで作られた火山フロントが交差する世界的に稀な場所に富士山はあります。地球上でこのような地域は他にありません。火山は、プレートが沈み込んで深さ100キロメートルに達した地点の真上に出来る為、プレート境界の内側に帯状に火山が並ぶ、火山フロントを形成します。フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが沈み込むことで出来た伊豆諸島や硫黄島などの火山がこれに当たり、北側の延長に富士山があります。ところがこの場所は同時にフィリピン海プレートが内陸側のユーラシアプレートに沈み込む場所でもあります。プレートが沈み込んでいるまさに境界からマグマが出てくるという、非常に珍しいことが起きています。
富士山の裾野が長い理由
普通の火山はだいたい標高が高い基盤の上、主に山脈の上のような場所にできます。東北や北アルプスの火山がそうです。しかし富士山の直下は、プレートの沈み込み帯になっていて高度は低いのです。そして周囲に高い山地がないため独立峰として自由に噴出物を出して、裾野を広げることができます。
富士山のマグマの特徴
富士山のマグマは玄武岩質のマグマで、このタイプは海に面した火山で見られます。ハワイ島で溶岩が川のように流れている映像が、まさに玄武岩質マグマの特徴で、大きな爆発はしません。ハワイ島では、そうした様子をそばで見たり写真に撮ったりすることもできます。富士山のマグマもハワイ島同様、高温で粘り気がありません。そのため、山の頂上から噴出すると滑らかに流れて非常にきれいな斜面を作り、円錐形の美しい姿を形成します。
マグマの分類
マグマは主にシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)成分の割合で分類されます。シリカ成分が52%より少ないものは玄武岩質マグマ、52~66%のものは安山岩質マグマ、66%以上のものは流紋岩質マグマと呼ばれます。噴火して地表で溶岩として固まるとそれぞれ、玄武岩、安山岩、流紋岩となります。海に近い火山は玄武岩が多く、内陸側の火山の溶岩はほとんどが安山岩です。関東平野を覆う関東ロームと呼ばれる土壌は、主に玄武岩質の火山噴出物が堆積し風化したものです。鉄分が多いため、酸化して赤い色をした赤土になります。日本各地に「○○富士」と呼ばれる山がありますが、どこから見ても同じ形で美しい富士山のような山はなかなかありません。
富士山はその美しさだけでなく、プレート境界と火山フロントの交差点に作られた地学的にも世界に例を見ない山です。しかし、これはダイナミックに変化する46億年の地球史の中では一瞬の姿だということも付け加えておきます。
火山が人に与える影響
シリカ成分が高くなるほどマグマの粘性が増します。粘性が高いと、マグマ中の水蒸気やガスが放出される際に大きな泡ができます。つまり粘性の高いマグマは大爆発をしやすいのです。伊豆所とのほとんどに縄文時代から人が定住できたのは、伊豆諸島火山のマグマが玄武岩質であることが一つの理由です。もし流紋岩質マグマの噴火であれば大爆発を起こして島民が全滅するような大被害を起こします。実際、伊豆七島の中でも、新島と神津島の火山は流紋岩質マグマを噴出します。平安時代、この二つの島の火山が爆発したことが分かっています。当時、火山には神様がいると考えられており、火山が噴火するたびに朝廷がその火山の神様に官位を与えていました。噴火は神様が起こっているからだとして、人が勲章をもらうと嬉しいのと同じで、神様も官位をもらえば喜び、怒りを収めて噴火しないよう努めてくれることを願ったのです。噴火した回数が多い火山ほど高い官位がついています。