文化人類学

イヌイット(エスキモー)のイグルーとは?雪の家の造り方や夏のテントについて

目次

  • イグルーとは?
  • イグルー(家)を造る時に考えること
  • 基本的なエスキモーの冬の家
  • 地域によって異なる家の造り方
  • 雪の家の造り方
  • 雪の家の造るのに必要な力
  • 雪の家の造り方
  • 夏の住居

イヌイットの住居のイメージとして雪の家を思い浮かべる人もいるかと思います。この記事では、イヌイットの住居について紹介したいと思います。

イグルーとは?

エスキモーやイヌイットといえば雪の家というイメージがあると思います。ところが、この雪の家を、極北に住むエスキモーの四分の三は見たことがありません。

エスキモーの中で雪の家を作るのは、カナダのイヌイットだけです。伝統的に立派な雪の家を作るのはカナダ極東の中部から東部を結ぶ一帯です。

雪の家は、よくイグルーと呼ばれていますが、エスキモー語のイグルーは、雪の家だけでなく、土や木の家でも、苔の家でもイグルーですし、日本の建物などもイグルーです。つまり、イグルーとは家の意味です。

イグルー(家)を造る時に考えること

エスキモーが家を造る時に考える必要があることは複数あります。

まず、家屋を作る材料があるかどうかが問題になります。

他にも、食料が不足しないように頻繁に移動するエスキモーにとっては、機動性についても考える必要があります。

また、もちろんですが、極北の厳しい寒さをしのぐことができるかも重要です。

つまり、エスキモーの造る家は以下の3つの要因のバランスを考えて作られました。

  • 保温
  • 材料の有無
  • 機動性

どれが重視されるかは地方によって異なりました。

基本的なエスキモーの冬の家

基本的なエスキモーの冬の家は、竪穴式の芝土葺きのものでした。

地面に深さ1mほどの穴を掘って、その上に組んだ流木や鯨骨の骨組みに芝土を厚く張りつけた竪穴式住居には、大きな生活エリアとそれに続く地下トンネル状の出入り口がありました。

入口のトンネルの途中に一つ以上の物置のための小部屋があり、食料の保存場所や外気と室内の間に入り外の外気が直接室内に入らないようにするなどの役割がありました。

生活エリアの天井についている換気口で室内の温度を調整し、アザラシの腸を張った明り取りの窓で日光を取り入れました。暖められていたのは生活エリアだけでしたが、一軒の家に住む6~8人の体温だけやアザラシの脂を使った石ランプで部屋の中はかなり暖かくなりました。

地域によって異なる家の造り方

エスキモーの家は地域によって気候や使用できる材料などに違いがあるため、地域によって家の造り方もかなり異なります。

流木も鯨骨もなかったポーラー・エスキモーでは、芝土もしくは雪を葺いた住居の壁を少しずつ内側に傾けながら築きあげるというアーチ原理を応用しました。

ベーリング海峡の島々と東グリーンランドでは、石が家の材料に使われました。アラスカの材木が豊富な地方では、丸太の家つくりの家もありました。

また中部極北地方で作られた型式の家はカルマットと言いました。

カルマットとは、高さ1~1.5m積み上げた芝土、石、もしくは、雪の壁に皮の屋根をかけたものです。

以下の条件がそろうところでは、芝土、木、骨、石などを使って今まで紹介したような半永久的な家を造りました。

  • 冬の大部分を一か所で過ごせる
  • 毎年同じ場所に戻れる

しかし、上記の条件がそろっていないところでは、もっと造りやすい家、あるいは持ち運びのできるテントが一般的でした。

風があまり強くない北西アラスカの内陸部では、テントは住居の主な方法でした。

しかし、年中吹く強い風と低い気温で知られている中部極北地方では、テントは適した住居形式ではなく、有名なドーム型の雪の家が作られました。

雪の家のつくり方

雪の家を造る時に材料とされる雪は、風によって固められており、無数の小気泡が入っているので、防寒性がすぐれています。

特定の条件の下で風に固められた吹きだまりの雪は、特殊なナイフで簡単に切り出され成形することができます。

ただし、家を造るのに適した雪があるのはカナダ中部極北地方だけであり、ここだけは雪の家が一般的に冬の住居として使われていました。

雪の家の造るのに必要な力

ドーム型の雪の家を造るには、相当な技量が必要とされます。

まず、吹きだまりになっている雪の性質を見抜く力が必要です。

積み上げていく雪の家の大きさを決める力、最後に完全なドーム型が出来るようにらせん状に積み上げるブロックの傾き度合いを決める判断力(傾きが強すぎると壁が地震の主さで倒れてしまい、傾きが弱すぎると円筒刑になってしまう)、ブロックを形作る技術、などが要求されます。

しかも、冬の極北はほとんど日が昇らないので、真っ暗闇で、極寒の風や凍りそうな寒さの中でも家を建てなければなりません。

雪の家の造り方

①雪質を調べる

まず雪質を調べます。

鉄の棒でも、雪ナイフでも何でもいいので、雪に突きさして反応をみます。理想的には、雪の層が平均していて途中に氷層や軟弱な層がなく、柔らかすぎず、硬すぎずという状態です。柔らかいよりは硬い方が良いとされます。

②ブロックを切り出すための穴を掘る

雪ナイフや雪のこぎりを使い、ブロックを切り出すための穴を掘ります。

③一定方向へ切り進む

ブロックの高さと同じくらいの穴が掘れたら、一定の方向へ切り進めます。ブロックの大きさは、高さ40-50cm、長さ60-90cm、厚さ15cm程度です。全くの平板よりもカーブをつけた板にします。

④竪穴ができる

10枚ほど切り出すと、ブロックの高さと同じ深さの竪穴ができます。

⑤ブロックを並べる

ブロックの並べだしは、竪穴をを囲んで円形に並べます。円の直径は、3・4人用なら二メートル半、十人用で四メートルくらいです。これで土台が完成します。

⑥一段目のブロックを斜めに切り落とす

雪のブロックの二段目を積むために、一段目のブロック2、3枚分の対角線沿いに斜めに切り落とします。

⑦ブロックを積み重ねる

⑥で切り取ったところから二段目を積み始め、あとは渦巻き状に積んでいきます。ブロックは内部から切り出すだけで十分足りるはずですが、失敗したりしてブロックが不足したら、3・4段積みあがったところで入り口を切って外から運び込みます。

⑧ブロックを積み重ね、頂上のブロックをはめこむ

高くなるにつれて傾きを急にして、3、4人用なら4、5段、10人用でも6、7段で頂上になります。最後の一枚は、頂上の穴が不規則になるので、ナイフで四角形か五角形に整理し、大きめのブロックを内側から外側に出してから、穴の形通りにすっぽり切り落とします。

⑨入り口を作る

これで、人間が中に閉じ込められた格好になりますので、雪ナイフで竪穴の部分に入り口を切って出ます。

⑩ブロックの隙間をふさぐ

ブロックの間の隙間を雪でふさぎます。

⑪天井に換気用の穴をあける

雪の家の天井に換気用の穴をあけます。雪の家の中で石のランプなどを使う為、換気はとても大切です。

⑫寝床を高くする

寝床を高くします。境界の線にブロックを並べて、残った雪を全部寝床の部分につめ込めば、一段高い床ができます。その上にカリブーなどの毛皮などを敷きます。入口は毛皮かカンバスなどでつくり、完成です。

夏の住居

夏の住居は、ほとんどの地方で皮のテントが使われます。

流木の骨組みに使い古しの皮を張って作られます。風よけにもなり、降りしきる夏の小雨をしのぎ、雲霞のごとく襲ってくる蚊を一時的に逃れる避難所にもなります。

テントの中の入り口の近くでホッキョクヤナギの枝を燃やし、その煙で蚊を防ぎます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

今回はエスキモーの家についてでした。

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